◇World Literatureからこの作品を選ぶ生徒は結構大勢います。私はすでにストーリーも分かっているので、生徒のコメンタリーに絡む箇所だけをざっと確認しながら、斜め読みしていたのですが、新潮文庫版の訳者である福田恆存氏があとがきに書いている文章を読んで、新たな発見がありました。
◇福田氏は、ベルナール・ファイの『アメリカ文明論』を引き、アメリカ文学には過去という時間の積み重ねがない代わり、それを未来と空間によって補ったのだという主張を展開しています。そして、ヨーロッパ文学が、歴史の積み重ねと対峙する個性に向き合ってきたのに対し、アメリカ文学は、広大な空間の中に脱出するという希望にすがってきたのだと。
◇そのことが、ヘミングウェイなど、ロストジェネレーションの作家たちに自覚され、アメリカ文学が質的に転換されたという指摘です。IB JapaneseのWLに応用可能かどうかはさておき、アメリカとヨーロッパの社会を比較する上でとても参考になりました。