IB Japanese 受講生が驚嘆のスコア!

◇2013年11月にIBディプロマの最終試験を受けた生徒からお礼のメールが届いた。「おかげさまでJapaneseは7が取れ、全体のスコアは44でした。正直、Japaneseが一番不安だったので良かったです」という文面。私からすれば、スカイプ授業を行っている段階でJapaneseが最高グレードの7になるだろうことはほぼ予想していたので、Japaneseのスコアには驚かなかったが、驚嘆したのはトータルスコアの44である。海外で指導を行っていた16年前から今まで、IBを受講した生徒から毎年スコアを聞いているが、44というのは初めて。ちなみに45がIBDPの最高スコアである。日本人で40を超えるスコアが取れる生徒はほとんどいない。

◇少し前の話になるが、とあるインターナショナルスクールのカウンセラーから、IBDPコースの生徒の最終スコアと進学先大学の一覧表を見せてもらったことがある。42以上の生徒は、アメリカならIVY League、イギリスならOxbridge、あとは、生徒の出身国のトップ校がちらほらといった具合で、名門大学の名前がずらりと並んでいたのを思い出す。日本人生徒の名前はそのスコアレンジには見当たらなかった。リストのずいぶん下の方、30台後半にようやくTokyoやKeio、Sophiaといった名前とともに日本人がちらほらと見つかるくらいであった。

◇44のスコアを取った生徒は、中学1年生からニュージーランドに単身留学をし、6年間を過ごしてきた。オーストラリアやニュージーランドの単身留学生というのは、アウトドアを楽しむのんびりしたライフスタイルなどの影響で、受験勉強などにおいて不利だと考えられてきた面もあるのだが、考えを改める必要があるようだ。中学段階から留学してIBのようなガッチリとしたプログラムで学べるのであれば、かえって、勉強に集中できる環境だと言えるかもしれない。

◇HL/SLでそれぞれどの科目を選択したか、Extended EssayとTheory of Knowledgeの評価がどの程度だったかということもメールで教えてもらったのだが、詳細はいずれ、本人にインタビューを行うなどして、もっときちんとした形にして皆さんにお知らせしたい。

「マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語」 アート・スピーゲルマン著

◇ IB Language A (Literature)では、翻訳作品を2つ、リストから選ぶことになっている(以前はWorld Literatureと呼んでいたが、2011年以降にスタートした新しいIB Languageでは、Literature in Translationと呼んでいる)。

◇私がふだん教えているIB Japanese Aを自学している生徒の中には、IBディプロマをスタートしたばかりの段階で「罪と罰」のような大作を、大作と知らずに選ぶ生徒もいる。もちろん、それで最後まで読んでくれればこちらは一向に構わないのだが、期の途中で挫折し(というかIBディプロマの忙しさに気づき)、作品変更の相談を受ける場合も多い。そういう時にお勧めするのがこの「マウス」である。

◇何しろ漫画であるから、読むのに時間はかからない。1時間もあれば読み切ってしまう。ストーリーも表題からほぼ想像がつくので、時間を節約したい生徒にはうってつけである。

◇ユダヤ人の視点でホロコーストが描かれているにも関わらず、センチメンタリズムを排した冷徹なタッチであるのがこの作品の文学的評価を高めている理由の一つであろう。生徒がよく注目するのは、ユダヤ人がネズミ、ドイツ人が猫、ポーランド人がブタとして描かれている点である。ある民族を動物として戯画化するという手法は、解釈によっては差別につながりかねないので扱いが難しいけれども、当時多くのユダヤ人を抱えていたポーランドの状況を考えつつ、「追う追われる」という関係にある猫とネズミに関係のないブタを利用した作者の意図を考えてみるのも、エッセイのテーマとして面白いかもしれない。

「獄中」日記 米英東亜侵略史の底流 大川周明 著

◇第2章の「米英東亜侵略史」を読むために図書館で借りてきた。「日米開戦の真実」という書名で小学館が佐藤優氏の解説を加えて出版しているのだが、なぜ書名と著者名を変える必要があったのだろう。やはりA級戦犯というイメージが売り上げに響くからだろうか。あるいは、より多くの読者に訴えるためには、大川周明を前面に出さない方がよいと判断したのかもしれない。

◇いずれにせよ、米英への開戦後わずか1週間という時期に放送されたラジオの講義録とは思えない程冷静で論理的な口調(筆の運び)は、戦後教育で勝手に作り上げた戦前戦中のイメージの修正を迫られるほどである。

◇考えてみれば、開戦の年から私の生年まではわずか20数年。その後に生きた年数よりもはるかに短い。その割には、戦前や戦中のことを知らなすぎる。大川周明の著書を頼りに大東亜戦争の意味をもっと考えないと、現代を読み解くことなどできないと痛感。