「現代語訳 義経記」 高木卓訳

◇先日の連休に鞍馬寺に行き、無性に義経の本が読みたくなりました。弁慶との出会いにまつわるエピソードや、頼朝に追われる身となって平泉に下ることなど、ところどころしか記憶になく、しかもうろ覚えだったので、この際しっかり読んでおこうと思って現代語訳を購入しました。

◇アマゾンで届いた本は、予想以上の分厚さだったので、正直怯みましたが、読み始めたら、これが止まらない面白さ。久しぶりに本を読みながら道を歩きました。

◇もちろんこのストーリーは伝説であり、史実かどうか分からない部分が多いですが、冒険物語の傑作であることは間違いないでしょう。日本にこういう冒険物語があったのですね。ドン・キホーテやハックルベリーフィン、海底二万里といった、西洋文学では確固たる位置を占めている冒険物語が、日本にはないのでは・・・という先入観を持っていましたが、考えを改めます。日本文学はやはりすごい。

IB Japanese おくのほそ道

◇「海外生に古典は無理」と考えているとしたら、それは日本の国語教育に毒されているかもしれません。IB Japaneseでは、選択する作品に縛りがあり、ほぼすべての生徒が何らかの古典を選択することになります。ただしIBのLanguage Guideには「原文で読め」という縛りはありません。

96条改正に関する論議

◇憲法学者の石川健治氏が、96条改正案についての意見を朝日新聞に寄稿しています。

96条改正という「革命」

◇理由があってハードルを高くしている改正手続きについて、ハードルが高い(手間がかかる)から低く変えてしまえと言わんばかりの改正案の暴論ぶりを丁寧に解説してくれています。

◇権力を縛る装置は厳重であればあるほど、国民にとってはよいことであるはずです。問題は、「その厳重さが原因で物事が先に進まない」といった「議論のすり替え」がなされても、我々は気づかないでいることがあるということです。それは、頭の良し悪しとか怠慢とかいうことではなく、忙しい毎日を送っている以上、やむを得ないことです(ダニエル・カーネマンはそのような思考を「システム 1」と名付け、人間の判断の合理性を支えていると「ファスト&スロー」の中で述べています)。

◇憲法学者のような専門家にとっては、石川氏の主張は、当然の理屈かもしれませんが、それをきちんと表現し、国民に知らせていくことは、専門家の責務でしょう。その意味で、こういった論考は、非常に重要であると言えるのではないでしょうか。

「京都の寺社505を歩く」 槇野修, 山折哲雄 著

◇京都を訪れています。

 

◇幾つもの時代が重層しているこの古都を楽しむためには、豊富な歴史的知識か、優れたガイドが必要になります。今回私が頼ったのがこの本。Kindle版が出ているのが嬉しいですね。

 

◇ガイドブックがなければ決して立ち寄らなかったであろうお寺にも足を伸ばす気になります。そういった寺社は、観光客がほとんどいないので、ゆっくりとその佇まいを味わうことができます。いわゆる観光名所も、見どころや建造の歴史などが解説されていて、列を待つ間に知識を入れることができて重宝します。

 

 

がん治療最新研究の報道

◇5月2日のBSフジのプライムニュースは、がん治療の最前線についての特集番組でした。専門家の知見をジャーナリストの立花隆氏が解説するという、素人にもよくわかる好企画だったと思います。九州大学の中山敬一氏と大阪大学の森正樹氏の研究は、がん細胞を生み出す「がん幹細胞」なるものの存在を仮定し、その細胞を狙って治療をすることで、根治の可能性への展望が開けてくるというものでした。

◇しかし、番組の中で問題だとしていたのは、がん研究に対する国からの予算が十分ではないということでした。そういった状況もあって、医学を志す国内の有能な若者が研究者の道を選ばなくなっているということです。アメリカの10分の1、シンガポールよりも少ないと言われる予算では、日本から優秀な研究者が流出することも懸念されます。

◇せっかく優秀な理系の人材が豊富にいる日本において、彼らを活かし切れない状況があるというのは、大きな損失です。文系理系という分け方には抵抗を感じますが、あえて文系エリートの使命ということを考えるならば、日本全体、ひいては全人類にとっての便益のために、専門家の知見を有効活用できる、国際的教養や公共性を発揮してもらうことでしょう。もちろんそのためは、そのようなエリートをチェックできるシチズンシップの確立が大切でもあるわけです。