もうかなり前からですが、UAEではスカイプの無料通話が制限されています。私は海外の日本人生徒と主にスカイプを使って、IB Japaneseや小論文・作文指導を行っていますが、チャットだったり、有料のスカイプ通話を利用せざるを得ない状況が続いています。
自国の電話会社の保護などといった事情があるのか、詳細な事情は分かりませんが、VPN接続も禁止したということですから、政府はかなり徹底して取り締まりをするつもりのようです。しかし、ステルスのようなVPNにより政府の監視をかいくぐるようなサービスもあるようで、イタチごっこの様相を呈しています。
もちろん私は、コンプライアンスの観点からVPNの使用を生徒に推奨はしていません。他の手段でスカイプのようなやり取りをしています。先ほども書いた有料のスカイプ通話はそういった手段の一つですが、わずかとは言え、課金されるのはあまり良い気分はしません。そこでとある会議室ツールを使っています。こういった会議室ツールも主なものはすでに使用できなくなっていますから、現在使っている会議室ツールも早晩使えなくなるかもしれませんが、今のところ何とか繋がっているようです。
UAE在住の皆さんがスカイプで便利なインターネットライフが送れる日はやってくるのでしょうか。
IB Japanese A -リフレクションの重要性
国際バカロレアDPの5月最終試験が近づき、海外からオンラインで受講している教え子たちもだいぶ「本気」になってきました。6科目の詰めが一気に押し寄せてきますから、ここからがいよいよ正念場です。…
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以前の「日常ブログ」を再開します
当ブログは、親サイトのリニューアルの際に外し、非公開のまま2年近くも放置してしまいました。最近少し時間が取れるようになってきたので、以前にとっておいたドメイン(studyextension.jp)を利用してこのブログを再開することにしました。ちなみにスタディエクステンションというのは私が代表をしている法人名です。
さて、最近はまっているのはヨガです。毎年冬になると一度はギックリ腰をやるのが癖になってしまっているので、体をほぐす意味で始めました。特に朝のヨガは心身共にリラックスできて気持ちがいいです。まだポーズは全然決まらないのですが、心や表情もほぐれていくのを感じます。週に2回くらいのペースで継続できればいいかな。
IBやTOK関連の書籍が相次いで刊行
少し前の記事で、福田誠治氏の『国際バカロレアとこれからの大学入試改革ー知を創造するアクティブ・ラーニング』という本をご紹介しましたが、2016年に入ってからIBやTOK関係の書籍が相次いで刊行されています。数年前までは、国際バカロレアに関する本はかなり珍しいもので、ましてやTOKに関するテキストの日本語訳が出るなどというのは、予想もできなかったことです。
TOKに関しては、ピアソン・ジャパンからのものとオックスフォード出版からのものがあります。どちらも内容は、元の英語版を翻訳したものですが、ピアソンの本では、IBやTOKが日本の教育にもたらす意義などについての対談も入っており、TOKを学ぶ人だけではなく、IBに関心を持つ教育者向けの編集にもなっているようです。
実はまだ手元に届いていませんが、Z会出版からもTOKに関する参考書が出版されました。これだけ日本語の参考書が出てきたのですから、実際に海外や国内のインターナショナルスクールで学んでいる方は是非手元に1冊持っておくべきでしょう。英語で授業を受けているにしても、日本語で理解しておくと助かることは多いはずです。
『国際バカロレアの数学』も、TOKと数学の関連やエクステンディッド・エッセイの例が示されていて、これまでに日本語の出版物としては類を見ないような本となっています。日本の数学ではほとんど使われないグラフ電卓の使用例を取り入れているところなどは、実際に授業現場で指導をしている方ならではと言えるでしょう。
『アクティブ・ラーニングとしての国際バカロレア』は、IB教育の第一人者とも言える大迫先生の著作です。こちらは、日本の教育がIBの教育のどういう点を参考にするべきかということについての提言がされています。
IB教育を受けている人やこれから受ける人は、どれを買おうかではなく、すべてに目を通してみると良いでしょう。そうすれば、実際の指導を受けた時、仕組みがわからないために低い評価を受けるということはなくなるはずです。
これほどIBに関する書籍が出てきたことは喜ばしいことです。
IB Japanese 受講生から 東大合格の報せ
本日3月10日は、東大の合格発表日でした。一般入試だけではなく、帰国生入試もこの日が発表。昨年5月の最終試験までIB Japaneseサポートを2年間受講していた生徒から、東大文科1類に合格したとの報せがありました。自分が教えていた生徒から合格の連絡を受け取るというのは、やはり嬉しいものです。
彼女が IB Japanese A(母語)で取ったスコアは最高ポイントである7。他の科目も概ね良いスコアを取っており、最終合計スコアは学校のPredicted Scoreより4ポイントも高かったとのこと。普段の授業以上に本場で実力を発揮するタイプだったということでしょう。
東大の帰国生入試は、1月の終わりに書類選考の結果がわかります。2次の筆記試験は、一般入試と同じ日程(試験内容は多少異なります)で実施され、さらにその10日ほど後に面接が行われます。
今年の文科1類の日本語小論文は、「たとえ難病を治すという目的があってもヒトの遺伝子組み換えは倫理的に許されない、禁止するべきだ」という見解について論評を加えなさい、というもの。コールバーグのモラルジレンマを想起させる出題です。その生徒は、人間の尊厳を傷つけるという理由で、遺伝子組み換えに反対の立場から書いたそうです。ルールの背後にある根拠を自分なりに見出し、普遍的原理を志向した点が評価され合格したのでしょう。
IB Japaneseであれ小論文であれ、こういう問いから議論が発展していくのは楽しいですね。当時ヨーロッパに住んでいたこの生徒とは、時差の関係もあり、日本時間の日曜夜によくスカイプでディスカッションをしました。文学作品の解釈について、いつもシャープな論評をしていたことが強く印象に残っています。
今受講中の生徒の中にも彼女に引けを取らないほどの作品解釈の力を発揮する生徒が何人かいます。古典文法は知らなくても、現代語訳で、枕草子や方丈記、おくのほそ道などを丸ごと読み、それらの作品の比較分析をせっせとしています。帰国生に英語力だけではない頼もしさを感じるのは、彼らがそういう学びをしているからなのです。
これからはしかし、国内の学びも変わっていくはずです。2020年の大学入試改革の目指す方向は間違いなく帰国生入試の方向に近いと言えます。
2月に発行されたこちらの本では、2020年大学入試のモデルとして、帰国生入試問題が数多く取り上げられています。今後どんな対策をしていいか分からないという人には一つの指針となってくれるでしょう。
IOC / IOPへの準備は万全ですか?
2016年5月に最終試験を控えるIBDPのJapanese A Self Taughtの受講生は、IOC(Individual Oral Commentary)とIOP(Individual Oral Presentation)が迫ってきました。
IOPの方ではプレゼンテーションの内容を原稿にして練習している人もいるかもしれませんが、本番では原稿を持ち込むことはできません。箇条書き程度のメモをもとに話の内容をまとめる練習をしておく必要があります。
少々たどたどしくても、伝えるべき内容が整理されていることが大切です。特に、オーラルの場合は、ESSAYなどとは違って、聞き手は内容構成を視覚的に確認することができません。内容をあまり入り組んだ構成にしないように配慮するとともに、「ここでのポイントは3つあります」「初めに○○について、その後に△△について触れます」などといったように、話の初めの部分で、伝える内容の構成をあらかじめ提示しておくと、分かりやすいプレゼンテーションになるでしょう。
また、IOCの方では、各ジャンルの5つの質問に対して、それぞれが全く重ならないような答えを準備しなくても大丈夫です。例えば、詩のstructure(構成)について答える内容と、内容を強調している技法について答える内容が、多少重なるのはむしろ自然なことです。ただし、出された問いに対して答えるという心構えは忘れないよう。二つの質問に対する答えが全く同じになるということはありえません。グッドラック!
「マクベス」ー作品の時代背景
IB Japaneseには、外国文学(翻訳文学)のパートがある。自学生徒はここから2冊を選び、どちらかの作品について3000字以内のエッセイを書く。先日はスカイプで指導をしている生徒がマクベスを選択し、その作品の時代背景について調べてきた。さすがに古典中の古典だけあってネットには色々な情報が載っているようだ。英語でサーチすれば、英文学に関する情報は山ほど集まる。そういうわけで実在のスコットランド王マクベスや、シェークスピアが執筆したとされる時期のイングランドの王位継承にまつわるエピソードもたくさん調べてくれた。
調べることはよいことであるが、フィクションである戯曲と史実にあたかも関連があるかのように捉えてしまうと、かえって作品分析の邪魔になってしまうこともある。
テューダー朝からスチュアート朝時代にかけて、新旧宗派の対立や王位継承をシェークスピアがどのように見ていたのかは、非常に興味深いものであるが、それを分析の中心にしてしまうと作品分析の本質からは離れてしまう。そのあたりのバランスが大切である。
加藤周一著 『日本人とは何か』と森有正著『いかに生きるか』
IB Japaneseスカイプでの通信指導をしている生徒が、パート4で加藤周一『日本人とは何か』と森有正『いかに生きるか』を選んできたので、比較してプレゼンテーションをするためのトピックを一緒に考えてみた。
パラパラとページを繰りながら、私が気になってしまうのは、Ⅱ章の「天皇制について」であるが、生徒の方は、その章にはあまり興味が向かない様子。もっと庶民のことが書かれているところがないかと、「普通の日本人」が論じられている箇所を探していた。
基本的に私が担当するIB Japaneseサポートでは、Self taught(自学)をサポートするということにしているので、生徒自身の気づきを尊重している。私の方から「こうしなさい」的なアドバイスはしていない。今回は、生徒が共通点を探しあぐねていたので、共通点ばかりではなく、対照的な点に気をつけてみてはどうかなという手がかりのみを指摘して、次回までの宿題ということにした。
『いかに生きるか』の方は戦後30年経った時代に書かれている本だが、戦後70年を迎えた今の時代に読んでも内容はまったく古びていない。というか、日本の課題は相変わらず真の民主化だったり個人の確立だったりと、何も進歩していないことに愕然とする。
次回生徒とどんな対話ができるか楽しみである。
「ペルセポリス」マルジャン・サトラピ著、 園田 恵子訳
Part1のTranslation(外国文学)でマンガを選ぶ生徒は多い。というか、文字をあまり読みたくないという生徒には、「マウス」か「ペルセポリス」をお勧めしている。マウスについては、以前の投稿でご紹介した。
今回はペルセポリスについてご紹介しよう。
「ペルセポリス」は、イラン国内のフランス式インター校で教育を受けていた女の子が、イスラーム革命以降に起こった身の回りの生活の変化や、母国を離れて暮らしたヨーロッパの生活を描いた作品である。ペルセポリスというのは「ペルシアの都」という意味と「都市を破壊する」という二つの意味があるらしいが、この作品においては、世界遺産のペルセポリスを指しているわけではい。
マンガとはいえ、イラン周辺の中東の現代史が一般庶民からの視点で描かれていて、イスラームについての基本的理解が乏しい私にとって、様々な示唆を与えてくれる作品であった。
IB Japanese のExamが終了
◇先週金曜日にPaper1、そして今週月曜日(昨日)にPaper2が終了した。今年は7名ほどのスカイプ受講生がいて、それぞれの選択した作品に合わせた対策をするのが大変だったが、生徒からのフィードバックを聞く限り、なんとか対策は役にたったようである。
◇IB Japanese:Literature の評価において、最終試験が占める割合は、Paper1が20%、Paper2が25%である。2年間の学習成果の約半分がこの2つの試験によって問われるのだから、ここを念入りに対策しておくかどうかが最終スコアに大きく影響する。
◇ところが、Paper1もPaper2も論述式の問題で、おまけに、文中に書かれていることだけではなく、自分の解釈を加えていく「評論タイプ」の問題なのである。何かを暗記していたからといって得点の上昇が期待できるわけではない。常に「正解」がある「国語」に慣れている生徒にとって、こういうタイプの問題は非常に苦手だ。どうしても「正解」という権威にすがろうとするところをどう飛び立たせるかが指導の胆となる。つまり、自分で考えるしかないなと覚悟を決めてもらうことが大事なのである。
◇そのためには、指導者は教えすぎないこと。もっと言えば、教えないことこそが大切なのだ。なんて無責任な指導者だと思われるかもしれないが、今のところそれがIB Japaneseの指導の極意だと思っている。