「マクベス」ー作品の時代背景

IB Japaneseには、外国文学(翻訳文学)のパートがある。自学生徒はここから2冊を選び、どちらかの作品について3000字以内のエッセイを書く。先日はスカイプで指導をしている生徒がマクベスを選択し、その作品の時代背景について調べてきた。さすがに古典中の古典だけあってネットには色々な情報が載っているようだ。英語でサーチすれば、英文学に関する情報は山ほど集まる。そういうわけで実在のスコットランド王マクベスや、シェークスピアが執筆したとされる時期のイングランドの王位継承にまつわるエピソードもたくさん調べてくれた。

調べることはよいことであるが、フィクションである戯曲と史実にあたかも関連があるかのように捉えてしまうと、かえって作品分析の邪魔になってしまうこともある。

テューダー朝からスチュアート朝時代にかけて、新旧宗派の対立や王位継承をシェークスピアがどのように見ていたのかは、非常に興味深いものであるが、それを分析の中心にしてしまうと作品分析の本質からは離れてしまう。そのあたりのバランスが大切である。

 

加藤周一著 『日本人とは何か』と森有正著『いかに生きるか』

IB Japaneseスカイプでの通信指導をしている生徒が、パート4で加藤周一『日本人とは何か』と森有正『いかに生きるか』を選んできたので、比較してプレゼンテーションをするためのトピックを一緒に考えてみた。

パラパラとページを繰りながら、私が気になってしまうのは、Ⅱ章の「天皇制について」であるが、生徒の方は、その章にはあまり興味が向かない様子。もっと庶民のことが書かれているところがないかと、「普通の日本人」が論じられている箇所を探していた。

基本的に私が担当するIB Japaneseサポートでは、Self taught(自学)をサポートするということにしているので、生徒自身の気づきを尊重している。私の方から「こうしなさい」的なアドバイスはしていない。今回は、生徒が共通点を探しあぐねていたので、共通点ばかりではなく、対照的な点に気をつけてみてはどうかなという手がかりのみを指摘して、次回までの宿題ということにした。

『いかに生きるか』の方は戦後30年経った時代に書かれている本だが、戦後70年を迎えた今の時代に読んでも内容はまったく古びていない。というか、日本の課題は相変わらず真の民主化だったり個人の確立だったりと、何も進歩していないことに愕然とする。

次回生徒とどんな対話ができるか楽しみである。

日本人とは何か (講談社学術文庫)  いかに生きるか (講談社現代新書)