◇「海外生に古典は無理」と考えているとしたら、それは日本の国語教育に毒されているかもしれません。IB Japaneseでは、選択する作品に縛りがあり、ほぼすべての生徒が何らかの古典を選択することになります。ただしIBのLanguage Guideには「原文で読め」という縛りはありません。
◇生徒が「おくのほそ道」を選んできた場合、私はまず現代語訳でよいから白河の関まで読んでみることを取り敢えずの課題とします。そこまで読んだら連絡してねと言っておくのですが(ちなみに私のしている指導はスカイプを利用する通信指導です)、たいていの生徒は序文ですでに躓き、しばらく音信不通となってしまいます。
◇そうです。あの有名なフレーズ、「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」・・・これでフリーズしてしまうわけです。
◇しかし、この表現についてやれ対句だとか、やれ李白の表現が元になっている・・・云々といったことを解説したところで、IB Japaneseでは評価にはつながりません。あくまでも自分が抱いた疑問を追究できるように仕向けることがポイントです。ですので、私がすることは、芭蕉にとって、旅人と月日はどのような点が似ているのかというGuiding Questionを提示することだけです。
◇芭蕉にとっての「旅」が、現代人の「旅行」とはどのように違うのかということを知識として与えるのではなく、作品の表現から感じ取っていくこと、それこそが生徒のみならず、私にとっても、新たな発見の機会となるわけです。