◇5月2日のBSフジのプライムニュースは、がん治療の最前線についての特集番組でした。専門家の知見をジャーナリストの立花隆氏が解説するという、素人にもよくわかる好企画だったと思います。九州大学の中山敬一氏と大阪大学の森正樹氏の研究は、がん細胞を生み出す「がん幹細胞」なるものの存在を仮定し、その細胞を狙って治療をすることで、根治の可能性への展望が開けてくるというものでした。
◇しかし、番組の中で問題だとしていたのは、がん研究に対する国からの予算が十分ではないということでした。そういった状況もあって、医学を志す国内の有能な若者が研究者の道を選ばなくなっているということです。アメリカの10分の1、シンガポールよりも少ないと言われる予算では、日本から優秀な研究者が流出することも懸念されます。
◇せっかく優秀な理系の人材が豊富にいる日本において、彼らを活かし切れない状況があるというのは、大きな損失です。文系理系という分け方には抵抗を感じますが、あえて文系エリートの使命ということを考えるならば、日本全体、ひいては全人類にとっての便益のために、専門家の知見を有効活用できる、国際的教養や公共性を発揮してもらうことでしょう。もちろんそのためは、そのようなエリートをチェックできるシチズンシップの確立が大切でもあるわけです。