◇この1冊で哲学の全貌を知ろうなどというのは土台無理だとしても、幅広い時代と領域からトピックが選りすぐられていて、考えをまとめる際の Reference として活用できそうである。例えば、「ラッセルのパラドックスとフレーゲの論理主義」「カントの定言命法」「ソクラテスの問答法」「ハイデガーの無」・・・といったように、哲学者の名前と概念がセットになっていることで、さらに深く調べる際のインデックスができるのがありがたい。
◇キンドルで英語版も併せて参照すると、さらに活用の範囲が広がるように思える。というのも各章についているGlossaryには、哲学で使われる基本的な用語の定義が書かれていて、これがまた思考を刺激するのだ。例えば、「論証」は、英語では “argument” であるが、 “A collection of premises offered in support of a conclusion” とシンプルに定義されている。つまり、 premises を積み重ねて conclusion に至れば、それは “argument “だということが明確に分かるというわけである。 もちろん中にはpoorな argument もあり得るから、 口論という意味での “argument ” があることも腑に落ちてくる。
◇どのページからでも気ままに読めるのも良い。こういう読み方で哲学を気楽に話題にできる方が、眉間にしわを寄せて人生を論じるよりも、楽しい。