『国力論』 中野剛志著

◆TPP反対論者の中野氏の理論的背景がよくわかる本です。経済自由主義とマルクス主義という二つの政治経済学の間にあって、経済ナショナリズムという系譜は、これまでまともに論じられてこなかったという主張が書かれています。

◆経済ナショナリズムは、「一国の国富=貨幣の量」と考える重商主義と混同されがちですが、世界経済を「ゼロ・サム」ゲームと見なさない点において、また、保護貿易と産業政策を恒久的に肯定しているわけではないという点において異なるといいます。

◆アメリカ建国の立役者の一人であるハミルトンや、スコットランド啓蒙派のヒューム、さらにヒュームの盟友で、一般には経済自由主義者と考えられているアダム・スミスなど、これまで「経済ナショナリズム」という文脈で語られてこなかった「有名人」たちが、実はこの系譜に位置しているということを明らかにしつつ、「ステイツ」ではなく「ネイション」の統一と連帯の重要性を訴えています。

◆TPP賛成論者がその根拠とする自由貿易は、無制限に許すべきではなく、利潤の基盤である「ネイション」を優先させるべきであるということでしょう。もっとも、TPP絡みの中野氏の発言は、もっと強烈でインパクトがあります。

 

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