『一般意志2.0』 東浩紀著

「一般意志は政府の意志ではない。個人の意志の総和でもない。そして単なる理念でもない。一般意志は数学的存在である」

◇ルソーの『社会契約論』に対する東氏による解釈は痛快です。これまで得体の知れない感じがつきまとっていた「一般意志」がすっきりと頭に入ってきました。

◇特殊意志と全体意志を、ベクトルとスカラーの比喩で説明していたことが、私には大きなヒントになりました。一般意志はすなわち方向を持ったベクトルの和であり、全体意志というのは、方向のないスカラーの和であると。

◇そのように考えてみると、特殊意志がみんなで議論して「一般意志」になる必要は当然なく、それぞれが勝手なことを言っておればよいと気楽になれますね。その集計はネット技術がしてくれるのですから。

◇ちょっと連想したのが、英作文の指導でよく利用していることです。今や、ある言い回しが文法的に正しいかどうかを文法書によって判断(断罪)するよりも、Googleで検索する方が合理的です。件数を見ればどの程度「一般的」な表現かを知ることができますよね。正しいとか間違っているという捉え方ではなく、どの程度一般的なのか、例えば定冠詞よりも不定冠詞の方がこの表現では一般的であるようだなどといった、判断のための装置を手にしている時代なのです。

◇声の大きい人が勝つような「民主主義」ではなく、新しい時代の民主主義の可能性が見える書です。

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