◇「すぐには役立たない就活マニュアル」という最終章の見出しが物語っているように、マニュアルを求めてしまう社会状況を批判的に浮き彫りにしながら、「うまく生きる」知恵を提示しようとしている書です。
◇「ひとかどの人物=スゴイ奴」が大勢いた頃に麻布中高に在籍した著者ならではのエピソードが盛りだくさん語られています。そういえば、私が某中学受験専門塾の仕事に関わっていた1990年代中ごろ、受験生(の保護者)の志向が少し変わったと感じられた時期がありました。東大合格者数における私立高校の、公立に対する圧倒的優位が話題になり、東大を初めとする難関大学への進学実績が私立中学の唯一の価値であるかのように一部の親に見えてしまった時代です。
◇麻布はそのような風潮を物ともせずに、校風を維持し続けました。その結果「自由すぎる」麻布を敬遠した保護者も多くいたと記憶しています。あれから20年近くが経過して、当時の空気は、今度は会社選びという場で繰り返されているように見えます。「無難」や「安定」にすがろうとする気持ちが、むしろリスキーだということを、自分も子を持つ父親としてよくよく考えないといけないなと感じます。